環境や社会、人に優しい消費と呼ばれるエシカル消費。 地方でさまざま起こっているエシカルの波をつなぐイベント
「MoFF2024」に、久宇良の吉田サバニ造船・吉田友厚さんが登壇し、“地域の力を引き出す観光”について語った。
地域が豊かになる観光
平久保半島コミュニティツーリズム
11月24日、カワイイ文化の発信地であり、若者や外国人観光客でごった返す東京・原宿の竹下通りに、スキンヘッドにニット帽姿で現れたサバニ舟大工の吉田友厚さん。
今年に入って欧米人も多く目につくようになった石垣島で、観光の新たな潮流をつくっている。この日、登壇したトークセッションでは、インバウンド向けに平久保半島で始まる本物のエクスペリエンスについて発信した。
「見た目のリゾート感ではなく、僕らが推すのは本物のカルチャー、暮らしです。 先人たちが山から水を引いてきて暮らしが始まり、集落が形成された。 僕はそこに移住してサバニを造って観光利用しているのですが、もともといる住民と観光客の乖離を絶対に防ぎたい。なぜなら僕がサバニを営んでいる理由は、お世話になった地域に恩返しをしたいからです。観光客を楽しませるのは当然ですが、その先に地域の人たちが本当に笑顔になっているかどうか、 地域コミュニティが健康になっていくことが大切なんです」
吉田サバニ造船・舟大工 吉田友厚氏
人と人を繋ぐ、かすがいの役割
普段はクルーズツアー中心だが、これから吉田さんが注力していくのは高付加価値の旅。サバニの歴史を学び、造り、帆を操って、立ち寄ったプライベートビーチで八重山の伝統料理を御重で味わう。
夜は三線を奏でながらのんびり星空クルーズもいい。旅行者が海洋文化の未来に貢献するような旅こそ、真に豊かな体験への道だと考えている。
「自然素材だけで造られるサバニは、木と木を合わせる際に蝶々の形をした木製の"かすがい"を300個くらい打ち込んで繋ぎ止めているのですが、 僕はそのかすがいの一個でしかない。結局、次世代にこの技術をどう残すかということしか今は考えてなくて」
吉田さんの強い意志に引き寄せられるように平久保半島には優秀な職人ガイドたちが集まっている。彼らは与那国馬とホースマンシップを深めるプログラムや、2億年前の地層を巡るコーステアリング&鍾乳洞プログラム、そしてジャングルで命の仕組みを体感するパーマカルチャープログラムなど、時代を超えて受け継がれてきた唯一無二の旅を展開する。
地域の課題で遊ぶという感覚
観光客から仲間に変わる
雄大な平久保半島は稀有なアドベンチャーフィールドである一方で、サンゴの白化や海草ウミショウブの激減などブルーカーボン生態系の消失の脅威にも晒されている。
「石垣島に足を運んでもらい、多様なプログラムに入っていく中で、観光客から仲間に変わる瞬間も出てくると思う。サンゴの白化や限界集落化など地域が抱える課題も多いが、深刻に捉えるより、それも楽しんでもらいたい。なにより地域の課題で遊ぶような感じで地域と関わってもらえるといい」
環境の改善や、社会、文化の発展に寄与するような旅のありかたは外国人だけでなく、日本の若者の関心も高い。課題を前向きにチャンスと捉えて、そこからアイデアやプロジェクトが次々と生まれていくと、地域はもっと豊かになっていくはずだ。
11月22-24日開催「MoFF2024/主催Freewill」in WITH HARAJUKUにてエシカルマルシェやトークセッションを展開 ❶レモンマートル・竹・カミツレだけで作られたフローラル・ウォーター ❷DENIM DARUMA ❸登壇者でツアーPR ❹石垣島の旬家ばんちゃん ❺シテ方宝生流能楽師・辰巳和磨 ❻放置竹林の竹あかりイルミネーション
新たな時代の豊かさを
みんなでつくる
資本主義も限界を迎えていて、お金だけでは人間は豊かになれないことは分かりきっている。おそらく新たな時代の豊かさは東京では生まれず、地方から生まれていく。
「昔は海でイカを釣ってきたら、売店のおばあに持っていくと、何が欲しい?と聞かれて、ビール4本と言ったら持ってけって、 取り替えてくれるんですよね。またあるとき泡盛を一升瓶持っていったら、売り値で買ってくれたんです。これはすごいシステムだと思って。こういう世界観が日本の細部まであったら飢えることなんて無いんじゃないかなと。その先進的な事例として、観光で平久保半島に来たら、 自分が持っている何かと、何か価値を見出せたら交換できるような仕組みがあったら面白いなと」
お金以外のベクトルで豊かさを享受しながら旅をする、これこそ近年注目を集める地域住民主導のコミュニティツーリズムの理想系。新たな時代の豊かさをみんなで創っていく観光の形が平久保半島で始まっている。
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