八重山民謡、島唄の唄者である那良伊(ならい)千鳥さんの祖父と叔母は舞踊の師匠、母方の血統に西表島祖納地区の祝い事や祭りには欠かせない「唄歌い」の女性がおり、西表島一の美声の持ち主といわれたという。
由緒ある那良伊家(ナリヤ)に生まれた千鳥さんは、幼少期から地域の祭りに親しみ、また血筋として〝唄歌いのDNA〟を受け継ぐ歌姫だった。自身について「千鳥は平和を運び、幸せを呼ぶ鳥。私は歌う人としての運命の下に生まれたと思っています」と語っている。
「ながらいたぼり」は2008 年にリリースされたアルバム『愛しい人へ~心をこめて~』(全9曲)の中の1曲である。
この歌は、居酒屋でひとり時を過ごす女性の姿から始まる。島酒を飲むうちに親に励まされた記憶がよみがえり、「祭り太鼓や三線が響けば 帰りたくなる」と望郷の念が募
る。「娘、元気かと親からの便り 長生きしてよと涙ぐむ」と続き、サビの部分では、嘆息とともに「ながらいたぼり」(長生きしてください)が反復される。
郷土の女優・平良とみさんが「ちむ(心)にあたてぃ(突き当る)神歌」と形容したように、千鳥さんの繊細で、祈りにも似た歌唱の真髄が表れている。
この曲をYouTube に初公開した千鳥さんの音楽仲間、仲嶺正哉さんは「彼女が遺した世界観とアコースティックギターの伴奏、そこに乗せられた胸に染み渡る唯一無二の歌声
は、時を経ても色褪せることなく、聴く者の魂を揺さぶります。(中略)
当時を知る方々はもちろん、初めて彼女の歌声に触れる若い世代の方々にも、この〝魂の叫び〟が届くことを願っています」とメッセージを寄せている。
制作年不明
作詞・作曲/那良伊千鳥
那良伊千鳥
1958 年生まれ。西表島祖納出身。
1998年『島つんださー』でデビュー。以後、3枚のアルバムを発表した。
後年は朝鮮半島における平和祭(平和祈願イベント)出演など活動の幅を広げ、八重山の風土、愛と平和を発信し続けたが、2013 年9月、病のため他界(享年56)。
