BEGINの実話を基につくられた映画「恋しくて」(中江裕司監督。2007年)で、中学校での音楽の授業中、複数の生徒が音楽の自由研究をしているなか、教師がそばに来てエレキギターを実演して見せるシーンがある。舞台は1980年前半。BEGINは当時をこう振り返っている。
「中学3年の時、音楽の担任で先生が来て授業中にレッド・ツェッペリンのギターを弾いたり、レコードを掛けてくれたり、びっくりした。先生の家までギターを習いに行った」(島袋優) 「音楽の道に進むきっかけは中学校の時の音楽の授業だった」(比嘉栄昇)
その教師は、大濵浩一さんである。大濵さんは新米教師だった頃から授業でロックミュージックを聴かせるなど、子どもたちの自由な感性を伸ばす指導を心掛けていたという。
八重山古典音楽の師範だった祖父、大浜津呂氏が自宅で民謡研究所を開設していたこともあり、大濵さんは幼い頃から豊かな音楽環境下で育った。音楽への愛が自然と育ち、八重山高校から東京音楽大学器楽科(サクソフォーン専攻)に進学。卒業後は音楽教師の道を選んだ。
『ガジャンのうた』は中学生の時につくった楽曲である。ガジャンガジャンガジャンと21回の繰り返しが3カ所。楽曲全体で71回もガジャンが歌われる。人の平穏を乱す最小のノイズであるガジャン(蚊)との格闘は最後、蚊取り線香で撃退されるという、イライラと可笑しみが交ざったあっけない終わり方で幕を閉じる。
負の感情が歌に変換された、あまりにも身近な日常の歌である。
大濵浩一
1958年生。石垣市出身。元・中学校の音楽教師。地域の吹奏楽部・マーチングバンドの指導者として長年貢献。八重山出身者ミュージシャンらへのサポート、地域音楽イベントへの参加、協演なども数多い。1997年「八重山ワンダフルミュージック」に参加。2023年、夫人の多美子さんとのデュオ「Hiro&Tami」で「愛と光のうちで」(全14曲収録)=上、写真=をリリースしている。