2015年。カワミツサヤカさんは、活動の拠点にしていた東京を離れ、帰省した。ソロで活動を続けながら「音楽を続けるかどうか」という葛藤のなか、心が晴れない日々を送っていた時期だった。
久しぶりの島での時間。連日、実家近くの海岸線で海を眺めて時を過ごした。夜には、手が届きそうなきらめく星がうれしかった。都会生活でまとわりついた埃や垢を落とすように、市街地から郊外、山や森、御嶽、景勝地などを訪ね歩いた。
「島を感じたかった」と彼女は振り返る。
ふるさとは、どこまでも寛容だった。「島のテンポがメトロノームで、ゆっくりとした呼吸の70〜75BPM(1分間に打つ拍の回数)」と体感でき迷いが消え、「東京でまた頑張ってみよう」と活力を得た。
サヤカさんがギターを手にしたのは小学6年生の頃。音楽好きで、フォークソングをよく口ずさむ両親の姿を見て影響を受けた。簡単なコードを教えてもらってからは歌うことに夢中になった。長渕剛の『乾杯』や吉田拓郎の『落陽』が歌い始めの曲というから、早熟な出発点である。
しかし30代を超えると、取り巻く環境の変化もあり、好きなはずの音楽に疲れ、歌うことが楽しくなくなった。出演の機会を得ても重荷を感じる日々……。『風波花』は、そんな背景を経て誕生した。
ふるさとの自然の懐に包まれ、息を吹き返したサヤカさんの素直な心情が、島のテンポと響き合って心温まるバラードとして結晶している。島時間の中に身を置いたからこそ生まれた、サヤカさんにとって「原点に戻れる歌」だという。
カワミツサヤカ
本名・川満さやか。1984年生まれ。石垣市出身、石垣市在住。2002年、中学の同級生と「BUBBLEGUM」結成(09年バンド活動休止)。2009年からソロでの活動開始。2016年から5ピースバンド「物語」のボーカルを担当。これまでにアルバム「心の歩幅」(2011年)「露蕾~つゆつぼみ」(2015年)「赤いギター」(2016年)をリリースしている。