思い浮かべてください。誰かと二人きり。車でドライブ中。窓も閉め切られているとします。そんな中、うんこの匂いがしたら、あなたはこう思うはずです。
「こいつ、ぴーふったな?」と…。
この状況ならまだマシです。それが三人以上でのドライブであったなら、最悪です。私の場合は「どうしよう、俺ぴーふってないけど、俺がふったと思われたら嫌だな…」と困ってしまいます。
大抵、そういう状況の時、人は気づかないフリをするか、自らその事に触れこういうでしょう。「誰かぴーふってん!? 臭いけど!」と。
「ぴー(屁)」が、全国共通語ではないということには多くの人が気づいているでしょう。しかし、実は「ふる(こく)」も共通語でないばかりか、沖縄本島でも通じない八重山特有の方言です。
「ぴー」は共通語では「屁・おなら」に当たりますよね。ウチナーグチでは「フィー」や「ヒー」と言います。また、「ふる」は音だけでみると共通語の「振る」や「降る」と同じ形ですがこれらの「ふる」には、おならを「出す」という意味はありません。
「ピー」はヤイマムニの形がそのまま現代も使用されている例ですが、「ふる」はヤイマムニの「フスン」(活用は「フスン(ふる)・フシダ(ふった)・フサヌ(ふらない)・フシッテ(ふって)・フスナ(ふるな)」が共通語の動詞の活用(四段活用)の形に変化したヤイマヤマトムニだと考えられます。
同じように、「漏らす」の意味での「ふかす」(例文:くそをふかす)もヤイマムニの「フカシュン(漏らす)」が共通語の動詞の活用と接触し変化した形でしょう。
私たちが日頃話している言葉にも、八重山で過ごしてきた先人たちの言葉が残っていると考えると面白いですよね。
PROFILE
大竹芳典
おおたけ・よしのり/1995年、石垣市生まれ。八重山高等学校を卒業し、石垣島イーグル観光にて就職。八重山のガイドを通して島人の宝に気づく。その後、沖縄国際大学にて琉球文化を学びながら、国語の教員免許を取得。現在は本島北部にて教員として活躍中。